How much?!
彼がカッコイイのは仕方ない。
“ブサイクになれ”とは言えないし、彼女達の口を止めるのも変な話だ。
だからと言って、平常心でいられるほど………私は心が広くない。
大好きな彼を独り占めしたいと思うのは欲張りなのかしら?
溜息まじりにお茶を口にすると。
「そういえば、住む所は決まったんですか?」
「………ううん、まだ。幾つかピックアップした物件を吟味中」
「一緒に住むのが、嫌なんですか?」
「………嫌ってわけじゃないんだけど………」
私の表情から察して、志帆ちゃんがズバリ尋ねて来る。
あれから私達は、彼の希望で同棲する事に決めたんだけど。
正直、話が全力疾走で駆け抜けてる気がして、他人事のように思えてならない。
『好き』と、想いを伝え合ったのだってついこの間なのに。
重なるようにして『結婚』を決断した私。
そして、承諾したと同時に一気に事が進んでいる。
お互いの家を行き来したり、待ち合わせしてデートしたり。
お互いに有給を遣って旅行に出掛けたりして、恋人だという実感が欲しいのに。
それらを全て取っ払って、既に結婚後の新居探しに躍起の彼。
しかも、新居が決まり次第、『入籍だけでもしたい』と言い出した。
嫌だとは思ってないし、断る理由もない。
それに、私の両親にもきちんと挨拶もしてくれて、両親の承諾もちゃんと貰えたし。
これといって、問題は何も無いんだけど……。