How much?!
いつの間にか意識を失い、寝てしまったようで。
目が覚めた時には室内が少し明るくなっていた。
寝返りを打とうとすると、身体が重く軋んで。
全身がバラバラになったみたいにいう事を利かない。
数時間前の出来事が夢じゃ無かったんだと、心から安堵の溜息を漏らすと。
「何、今の溜息」
「へっ?」
身体が鉛のように重くて、抱き締められている感覚もあまり感じなかった。
耳元に届いたのは、紛れもなく大好きな彼の美声。
だけど、ちょっと機嫌が悪いみたい。
声色に棘がある。
「なぁ、もしかして、後悔してんのか?」
「え?」
「だって、今さっき、溜息吐いた」
「…………違うよ。夢じゃなくて良かったなぁって安堵したところ」
「本当か?」
「ん。だってあんな恥ずかしい事、二度と言えそうにないものっ」
思い出しただけでも恥ずかしい。
顏に熱が籠るのが分かる。
そんな上気した顏を見られたくなくて、彼の胸に顔を埋めた。
すると、
「毎晩言って貰いたいんだけど?」
「ッ?!」
ご機嫌斜めな彼が、急に余裕の態度に豹変した。
いつもながらの意地悪な声。
だけど、何だろう?
ちょっと………ううん、かなり安心した。
だって、彼の表情から不安の色が消えていたから。
小一時間程ピロートークをしてから、彼は仕事へと向かった。
そろそろ私も準備しないと。
軋む身体が嬉しくて、昨日までのモヤモヤが嘘のよう。
早坂小町 30歳。
愛する彼と共に、人生を歩む覚悟を決めました。