How much?!


「それ、今日の改装手伝いで配られたやつだから」


うちの会社では、店内改装の度に協力業者に配るお弁当が決まっている。

それが、この助六寿司だ。


先週から今週にかけて改装している店舗がある。

エリア統括部長が今日いたのがその店舗で、恐らく彼もその場に居たに違いない。


そして、部長の指示で私達を迎えに来た………そういう事のようだ。



「麻生さんの夕食は?」

「業者と済ませたから気にするな」

「………」


彼の言葉が嘘か本当か分からない。

けれど、今日は有難く戴く事にする。

精神的にも肉体的にも疲れ切っているから……。


「では、遠慮なく戴きます」

「ん」


車は静かに発進した。

滑らかなハンドル捌きに思わず見惚れ……。


「ん?………何?」

「ッ!………いえ、別に」


つい見惚れてただんて、口が裂けても言えない。

私は流れる景色に視線を移した。






会社に送って貰えるのかと思っていたら―――――。


「どうして、ここが……?」


私を乗せた車は、自宅アパート前に停車した。


「さぁ、何でだろう?」


相変わらず飄々とした顔が憎らしい。

無駄にイケメンなのが更にムカつく。


恐らく、社員名簿を閲覧すれば直ぐに分かる事。

深く考えるのは止めよう。

変に口が滑ると、ロクな流れにならないから……。


鞄とお寿司を手にして、ドアノブに手を掛けると。


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