How much?!
「今日はゆっくり休め。あれだけ動けば、体が辛いだろ?」
「…………へ?」
「今日中に筋肉痛になればいいが………」
そう口にした彼は、お得意の値踏み視線を浴びせ、
「今日中に出て来るとは思えないな」
「ッ?!しっ、失礼ですよッ!?」
「フッ、やっと機嫌が直ったか」
サラリと毒を吐かれた上に、全て計算した上で話していたかと思うと頭に来る。
だけど、何だろう……?
もしかして、私が仕出しを手伝っていた姿を見てたって事?
じゃなかったら、さっきの言葉の意味が通じない。
志帆ちゃんが言ってったっけ。
車内を温めておいてくれるなんて、優しいって。
さっきのふらつきに対しても、このお弁当も。
もしかして、本当のあなたは…………優しい人なの?
ドアノブに手を掛けたままで固まってしまった。
脳内が混乱して、言葉が出て来ない。
もしかしたら、これ全て彼の手口なのかもしれないが、どこまでが本気なのかも分からない。
もう、頭の中がぐちゃぐちゃだ。
「送って下さって、ありがとうございました!」
ほんの少しだけ彼の方を向いて、軽く頭を下げた。
そして、彼の視線を振り切るようにドアを開けると、ドアノブを手にしてない方の腕を掴まれ引き戻された。
そして、私の耳元に唇を寄せた彼。
「今日の小町は、その寿司くらい……だな」
「………え?」
そう言い終えた彼は私の身体をポンと押し、その弾みで車から降りると、彼は長い腕で助手席のドアを器用に閉めた。
そして、クラクションを2回鳴らし、その場を後にした。
手にしている助六寿司に視線を落とすと、そこには税込み『518円』と記されていた。