How much?!
志帆ちゃんに言われて、初めて気付いた。
右手でお箸を握り、金目鯛の煮つけを頬張りながら、左手でスマホをフリックしている。
別にこれといって、急ぎのメールをしている訳でも調べ事をしている訳でもないのに……。
目の前の志帆ちゃんは、既に食べ終わったようで頬杖をつきながら私をじとっとした目で見つめている。
そんな彼女にこれ以上悟られまいと、必死にご飯を口の中へ放り込む。
「先輩」
「………んっ?」
「先輩には可哀想だけど、待ってても連絡は来ないと思いますよ?」
「へ?…………どういう意味?」
無理やりご飯を飲み込み、お茶を一口。
気を落ち着かせて、彼女に視線を送ると。
「健ちゃん(志帆の恋人=皆川健吾)でさえ目が回るほど忙しいのに、食品部門の麻生さんなら尚の事忙しいに決まってるじゃないですか」
「…………そうだよね」
雑貨は比較的計画販売が効くけど、生ものを扱う食品部門は予測が立て難い。
しかも、年末年始は季節物や特売品、メーカーによっては増量品など、企画物が多くそれを把握するだけでも大変なのだ。
さらに、賞味期限や鮮度の問題、メーカーのリードタイム(注文から納品に至るまでの時間)もある他、地域によっては売れる品も違う為、予測不可能な状態でお正月が明けるまで過ごさねばならない。
7年も勤務していれば嫌というほど理解している。
一般食品部門や菓子部の事務の子達は年末年始の休みなど無いのだから。
志帆ちゃんの言葉の意味が解ってはいるんだけど……。