How much?!
「ケーキを買って来たので、美味しい珈琲を淹れて下さい!」
「………はぁ~い」
何だかんだ怒っていても、私の好物のケーキをしっかり買って来てくれるあたり、本当に可愛い。
しかも、私のお気に入りのケーキ屋さんの物だ。
「はい、どうぞ」
「ありがとうございます」
カップをテーブルの上に置き、お皿やフォークを乗せたトレイも置くと。
彼女は何も言わなくてもケーキを取り出し、お皿の上に乗せてくれる。
いつもの私達の光景だ。
プリプリ怒っていても、彼女の愛情はちゃんと伝わってくる。
「ケーキ、ありがとうね」
「いいえ、どう致しまして」
クール美人な顔がほんの少し歪む瞬間。
はにかむ彼女の顔は、ホント可愛い。
こんな顏、私と恋人の皆川さん以外、知らないと言うのが不思議なくらい。
ちょっとばかり優越感に浸っていると………。
「先輩」
「……ん?」
「何で行かなかったんですか?」
「………何でだろうね」
「昼間のアレは、わざとだって私、言いましたよね?」
「うん、そうだね」
「じゃあ、何で?」
昨日の仕事上がりに更衣室で彼女に言われた。
『アレはわざとで、先輩の事をからかいたかったんですよ』って。
そんな事は百も承知。
そもそも、初めからからかわれてるし、嘲弄されっぱなしだし。
あんな可笑しな賭けだって、遊び半分で言ったに違いない。
私は自分の『初めて』が懸ってるから、無意識に気になってしまったけど……。
それに―――――。