How much?!


最初の30分位は志帆ちゃんと他愛ない世間話をしていたが、上機嫌の上司に呼ばれて、彼女はお酒を注ぎに回り始めた。


私も昔は同じようにお酌をして回っていた。

いつしか年数が経つにつれ、若い子達がお酌に回るようになり、そんな光景を呆然と眺めるようになった。

やっぱり、若い子が注ぐ方が場が盛り上がるしね。


宴会場のステージでは広報部長と新入社員の女の子が楽しそうに演歌をデュエットしていた。

私はそんな光景を眺めながら、同じ卓に座る社員や業者さんと他愛ない会話をして、時間をやり過ごした。


……そろそろいいなか?

痺れを切らした私はチラッと腕時計に視線を落とすと、既に1時間が経過。

もう帰ってもいいよね?

私は志帆ちゃんにアイコンタクトを取ると、彼女は笑顔で手を振った。

さて、嫌な想いをする前に帰るとしますか!



今でも思い出したくない、4年前の忘年会。


上司の小言にも我慢して、漸く帰ろうと腰を上げた瞬間。

よりにも、隣りに座っていた漬物メーカーの社長に抱きつかれ、しかも皆が見ている前でお尻を撫で回された。

必死に身を捩ろうとしてもガッチリと下半身が羽交い絞めに遭って、私は身動き1つ出来なかった。

しかも、そんな私を好奇なものでも見るように、会場中の痛い視線が突き刺さって……。


耐え切れなくなった私は、エロ親父の頭に拳を1発見舞ってやろうと握り拳を作った。

すると、そんな私の握り拳を部長に掴まれ、無情にも制裁を阻まれてしまったのだ。


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