How much?!
突然手を掴まれ、夜景とは反対方向へと歩かされる。
「あの、麻生さん?」
「いいから、黙ってついて来い」
暗闇の中、彼の背中だけを目印に歩かされ、木々の歩道を進んだ先にひっそりと佇むレストランがあった。
彼は後ろを振り返る事無く店内へ足を踏み入れ……。
「いらっしゃっ……あら大和、どうしたの?」
「ちょっとだけ、2階いい?」
「えぇ、いいけど」
「んじゃあ、勝手に上がらせて貰うから」
「何か要る?」
「冷蔵庫から勝手に貰う」
「あっそ」
麻生さんが話し掛けた年配の女性と目が合った。
すかさずお辞儀をすると、ニコッと微笑み返された。
何が何だか分からないが、一応礼儀は弁えている。
「夜分に失礼します」
麻生さんに手を引かれて歩きながらだが、最低限の挨拶をした。
ホント、彼は自己中というか、俺様というか。
毎回、私1人振り回されている気がする。
溜息を零しながら、カフェレストランのような店舗の2階へと階段を上った。
そこは自宅になっているようで、リビングらしき部屋に通された。
「ここで待ってて」
「………はい」
大きな窓に向って配置しているソファに腰を下ろす。
すると、室内の照明が落とされ、カーテンが自動に開き始めた。
「えっ?!………凄~いッ!!」
思わず感嘆の声が漏れ出すほど、窓から望む絶景に目を奪われた。
駐車場で見た景色よりも、より綺麗に夜景が見える。
というより、夜景を見る為にこの建物が造られ、そして、この部屋があるように思えた。