How much?!
「んッ?!」
これって、デジャヴュ?
いや、違う!
全く同じパターンじゃないッ!!
強いて言うなら、体勢が微妙に違う。
って、そんな事はどうでもいいッ!!
「ちょっと、離してっ」
「ヤダね」
「なっ、何でよッ!」
「フッ、帰したくない………って言ったら?」
「ッ?!」
解ってる、この男の言葉は挑発なんだって。
だけど、耳がおかしくなったのか、甘い響きに聞こえちゃうんだってばッ!!
無駄に色気のある美声に、不本意ながらもまんまと脳が反応してしまう。
しかも、布越しに伝わる彼の体温に、再び心臓が悲鳴を上げ始めた。
「帰る………帰りたい…………帰らせてよっ」
「ヤダね」
「んっ……」
鼻先が触れそうな距離で真っ直ぐ見つめられて、視線を逸らす事も出来ぬまま……。
必死に言葉にして抵抗したのに………。
いとも簡単に囚われてしまった。
必死に忘れようと努力した記憶も。
一瞬の甘い刺激で甦ってしまった。
熱い吐息を纏いながら、甘美な痺れをもたらして……。
後ろ首を支えていた指先はいつのまにか髪を撫で、緩く纏め上げていたバレッタを外した。
すると、サラリと揺れる髪を掻き分けるように地肌に彼の指先が這う。
その心地良さに身体の力が一気に抜けて行った。
腰を抱き寄せていたもう片方の手は、緩やかに上昇して。
背中を這って肩まで上り詰めた彼の指先は、ゆっくりと私の腕をコートから脱がす。
そして、逃げても逃げても追い求めて来る彼の舌先に、私は全ての限界を知らせる白旗を上げた。