How much?!


身体は勿論の事、思考までもが浮遊して……。


すっかり記憶された微かな柑橘系の香りと。

痛いくらいにきつく身体を抱きかかえる逞しい腕。


ゆっくりと歩く彼とは対照的に。

私の左胸は物凄い速さで危険を知らせる。


――――けれど、動けない。

完全に腰が砕けて、逃げる事さえ出来そうに無い。



ふわりと身体が着地した場所は、いつの間にか温められた寝室のベッドの上。

広々としている所を見ると、ダブルベッドのようだ。


肌触りの良い羽毛布団が掛けられ、彼もまたベッドへ潜り込んで来る。


スプリングが軋み、ほんの少し身体が沈む。

そして、すっかり馴染んだ柑橘系の香りが鼻腔を掠めた。



どうしていいのか分からず、視線を泳がせていると。


少し骨ばった長い指先で私の髪を梳いて、優しく頭を撫でる。

そして、その手先は後頭部を持ち上げるように滑り込んで。


それとは反対の手がゆっくりと私の首の窪みに滑り込む。


後頭部に添えられていた手は今一度優しく髪を撫で。

そして、ゆっくりと降下して行く。



私の肩を抱き締めるように辿り着いた手は、とても温かく感じた。


「小町」


耳元を甘く犯す甘美な声音。

胸の奥が自然と疼く。


耳元に寄せられた彼の口元。

熱い吐息がかかった――――――次の瞬間!!


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