How much?!


人って、悔し過ぎると思考がおかしくなるらしい。

必死に繋ぎ止めておきたい想いも簡単に手放そうとする。


自暴自棄っていうのかな。

もう、どうでもよくなって来た。


どうせ、私には運命の人だなんて現れる筈がない。

こんな風にのこのことついて来てしまった自分への罰なのだろう。



私の涙に驚いた彼はゆっくりと私の上から離れた。


そんな彼を視界に捉え、ますます思考があらぬ方向へと暴走し始める。


『初めて』だという女が涙を流す。

これ以上無いほどに、鬱陶しいに決まっている。


けれど、暴走してしまった思考は、そう簡単には元には戻らない。



私は頬を伝う涙を拭う事もせず、彼が視線を向ける中―――。

カラータイツを脱ぎ棄て、そして、ワンピースをも脱ぎ棄てた。




そして、静かに瞼を閉じて……。



「私の負けでいいです。…………貴方にとって、何の価値も無いかもしれませんが………笑いのネタくらいになるでしょうから」


なけなしのプライドで呟いた言葉。

今の私の精一杯の強がりだった。


私の行動が意外だったのか、固まっている彼。

もしかしたら、呆れているのかもしれない。

でもそんな事、もうどうでもいい。


私は目を閉じたまま、静かにベッドに横たわった。


すると、パサッと布団が掛けられ、ベッドが一瞬軋んだ。


「セール品には興味が無いが、自ら値引く女にはもっと興味が無い」

「ッ?!」

「服を着ろ。…………送ってやるから」


彼はそれだけ口にして、寝室を後にした。


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