How much?!
「で、何があったんです?」
「ストレートに聞くねぇ~」
「遠回しに聞いても時間の無駄だし、話がややこしくなるだけですから」
「………ご尤もなご意見で」
「で?………何があったんです?」
志帆ちゃんは完全に取り調べをする刑事のように、心の奥までも見透かすような瞳でじっと見据えて来た。
私は珈琲をゴクリと飲み込み、観念したかのようにカップをテーブルの上に置く。
そして、フゥ~と一呼吸置いてからあの日の出来事を全て話した。
記憶を1つ1つ辿り、全て話し終えると………。
「なるほどね~。先輩の気持ちは分かります。私も似た感じでしたし」
「え?」
「実は私も、彼が初めてだったんですよ」
「えっ、嘘っ?!」
志帆ちゃんが……?!
意外な事を聞いてしまい、ほんの少しテンションが上がる。
「私の場合、ちょっとからくりがあって……」
「からくり……?」
「はい。彼には内緒なんですけど、実は、私の一目惚れだったんです」
「えぇっ?」
「新入社員研修の時に彼が担当になって、彼の仕事をしてる姿に一目惚れしちゃったんです」
「………初めて聞いた」
「はい、初めて言いましたからね」
「で?」
「それからは全然接点が無くて、たまに事務所ですれ違ったりするだけでドキドキしてたんですけど」
「………うん」
クールな表情だった彼女が、ほんのりと頬を染めながら話してくれている。
そんな姿が微笑ましくて、思わず心がほっこりとする。