How much?!
腑に落ちない私はケーキを頬張る。
難しい問題を解くには、脳にエネルギーが必要だ。
たっぷりのチョコクリームを口に含み、志帆ちゃんに視線を向けると。
「普通、彼女でもない女に鍵を渡したりしませんよ?」
「………」
「それと、先輩の家を知ってるのも納得がいかない」
「………」
「それに、健ちゃんが言ってた『無器用』って言葉が引っ掛かるんですよね~」
「無器用………ねぇ」
無器用な男がどういう行動を取るかなんて分からない。
そもそも男性と付き合ったのだって、カウント出来ないくらいの付き合いだったし。
基準が曖昧過ぎて、分からない。
結局、正月休みは悶々としたままあっという間に終わってしまった。
あれからというもの、彼からの連絡は1度も無い。
勿論、私から連絡する事も無く。
気付けば、1月も終わろうとしていた。
スーリール本社では、既に春彼岸や花見用の特売商品の商談が始まり、各店では節分やバレンタイン用の催事場が賑わい始めていた。
「早坂さん、外線1番に紺野部長からお電話です」
「はい」
“紺野部長”という響きに嫌な予感がしながら、私は電話に出た。