How much?!
「お疲れ様です、早坂です」
「おぅ、お疲れさん。早坂、悪いな。今から虹ヶ丘店に金庫のスペアキーを届けてくれるか?」
「えっ………スペアキーですか……?」
「ん~、店長の三沢が鍵を持ったまま、伊豆研修に行ってしまったようで」
「………」
「悪いな、いつも無理言って」
「…………いえ、大丈夫です」
「今日は早番か?」
「あっ、はい」
「早番なのにホント悪いな」
「……………いえ」
「鍵じゃなければ他の奴に頼むんだが……」
「平気です。今から出発して、夕方頃には虹ヶ丘店に着くと思います」
「そうか。褒美は後でたっぷりやるから、今日は宜しく頼むな?」
「はい、では、失礼致します」
受話器を置いて、疲れがドッと出る。
自然と視線が志帆ちゃんと絡み合う。
彼女の口が『また?』と動いたのが分かり、小さく頷く。
パソコンの電源を落とし、机の上を片付けて……。
「須藤さん。紺野部長からの要請で、今から虹ヶ丘店に金庫のスペアキーを届けて来ます」
「えっ、今から?」
「………はい」
「今日は早番なのに……」
「はい、でも……大丈夫です。明日は公休日なので」
「いつも任せてばかりで悪いわね。部長には私から文句を言っとくから!」
「フフッ、有難うございます。では、行って参ります」
「気を付けてね」
「はい」
事務長の須藤さんに声を掛け、志帆ちゃんにアイコンタクトをして事務所を後にした。