Not to memories
映画を見おわり、近くのコーヒー屋さんのソファーに腰掛け、佐藤くんが無我夢中になって
映画を語っている。

「あそこの部分、俺辛かったー。
涙でそうでこらえるの必死だったし。

あーほんとー感動したー」

相当よかったんだろうな。
佐藤くん今とってもきらきらしてる。
いいなー。佐藤くん。
思いのまま、感情を素直に表現することが
できる人。そんな佐藤くんはとってもいい人。


佐藤くんの言うように、とっても映画はよかった。
私の苦手な恋愛モノ。高校生の男の子と女の子。いろいろありながらもようやく付き合うことができたと思ったら、彼氏が交通事故で亡くなってしまう。残された彼女はどん底に落ちるが、彼が残してくれた色々な思い出を胸に前に進んでいく姿を描いた映画。

本を読んだ時は、ゆいが亡くなる前で、ただ感動して、この彼女を応援しながら、文字を読んでいった。

だが今は、彼女を自分と重ね合わせてしまう。

映画はよかった。でも複雑な思いになるのも事実で。。。

「あれ??ゆいはあんまりだった?本の方がよかったとか?」



「あっ。ううん。最後のところ感動して、少し泣いちゃった!!」


「えーゆいが泣くとこ見たかったー」

「恥ずかしいからやめてよ!!

ねっ佐藤くん。もし、映画のように大切な人が
急に亡くなっちゃったらどうする?」


「やだ。絶対何があっても死なせない。
絶対俺が守る!」


。。。

死なせない。

。。。。


佐藤くんの言葉は正しくて、力強くて、、、

それができなかった私は
やっぱり最低で汚くて。。

この世に存在してはいけない気がしてしまう。
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