Not to memories
寒い中、高台から見える夕焼けを見ながら、
チーズケーキのラッピングを外してしまおうと
したとき、ビューんっと冷たい風が吹きこみ、
寒すぎて一瞬固まったので、仕方なく少し戻って自販機で、あったかい飲み物を買った。

「俺も」

。。。やば。。まさと。。。どうしてもーこういう時に。。

ピッ仕方なくまさとの分の甘〜いコーヒーを買う。

はいっと渡すと、あったけーっといって、
首に当てている。

ましとのこと、身近な存在だと少し勘違いしてたな。。
学校でまさとに群がっている女子たちの
光景を思い出すと。。アイドル的存在だし。

もういいや。帰ろ。
駅の方向に向かって歩いた。

「おい!帰んの?」

「うん。帰るところだったから」

「そか。じゃあ俺も帰る。」

「なんで?」

「ゆなと帰りたいから。ってか日課だし」

確かにここ最近、下駄箱とか駅とか、
コンビニとかに出没して
一緒に帰ってるけど。。。

「ってか今日探すの大変だったし。
帰ったかと思った。。」

「あのね。。だから探したり
待ったりしないで電話くれればいいよって
言ったじゃん。
また風邪引いたらどうすんの!」

「。。。いいだろー。別に」

「よくない!」

「じゃあ探さなくても
待ってなくてもいいようにしろよ」

。。。
「。。。わかった」

「。。。ほんとかよ?」

「うん。じゃあ今度から一緒にかえる。」

私のこと心配してるから
待ってたりするのかな。。。

まさとがまた笑った。


あれ??荷物カバンだけ?
佐藤くんはあんなに大きい紙袋もってたのに。
あんなに女の子群がってたのに、
カバンに収まるはずない。。

まさか。。

「捨てたの?チョコ」

「は?なんだよ急に。」

「だって、あんなに女の子いたのに
チョコ持ってないから。。。」

「あ?もらってねーし。」

「なんで?」

「だってもらえねぇだろ」

「甘党なのに?」

「ただのチョコじゃねぇだろ。。。」

「ひとつも?」

「あー。気持ち答えらんねぇし」

「。。。」

「わりぃかよ。。」

「絶対チョコもらわないの?」

「ああ。」

「絶対に??」

「なんなんだよ。さっきから」

「。。。じゃあこれは貰ってくれる?
チーズケーキだから。。」

私は持っている紙袋を差し出した。

「ぷっ。そういうことじゃないんだけど。。
ゆなのならチョコなら貰うし。。」

「。。。クリスマスプレゼント貰ったからだよ?」

「はいはい。。。ベンチ行ってもいい?
今食べたいから」

「うん。。」

ベンチに行き、紙袋から箱を取り出し、
箱の蓋を開け、昨日徹夜して作った
チーズケーキがお目見えした。。
なんか恥ずかしい。。
まさとの口に運ばれて。。。
チーズケーキもさぞかし嬉しいことだろう。
本来もらって欲しかった相手に食べられて。。

「うめぇーじゃん!」
嬉しそうに食べている。
チーズケーキだけじゃなくて、
私も正直嬉しい。

「私にも一口!」


「は?あげねぇし。」

「え?だって私味見てないし、
美味しくできてるか不安だから一口!」

「俺んだし。
言っとくけど、俺バレンタインで貰ったもの
初めて食べてるから。
貴重なもんあげられっか」

初めて。。。
うそ。。。

「だめ!食べないで!!」

「もう遅い。食べたし。貰ったし」

こんなとこ誰かに見られたら刺されるぐらい、
ひどいことしてる気がしてきた。。。

はぁ。。いいんだろうか。。。
まさとは喜んでるけど。。。

すっごく美味しそうに食べてるし。。。

嬉しいんだけど、
素直に喜んじゃいけないような。。。
私なんかが。。いいのだろうか。。
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