Not to memories
「おーい!キモたーん」

「なんだ?」
化学準備室の扉から顔を出している。
メガネを外しオフモード。
私のキモたんという呼び方にも慣れたのか、
諦めたのか、突っ込む様子もない。
「よかった。今日はキモたんだ」
。。。
「で?」

「これ。。。」

「。。まさか相談しに来るとはな。
白紙で出すかと思った。
少しは大学行きたくなったのか?」

「うーんわかんない。
大学がどんなもんなのか知らないし。
でも前向きに検討いましますってことで、
どこいけばいい?」

「そんなの自分で選べ。」

「そんなこと言われてもーーーわかんない!」

「んったくーばか。。
。。。。。
。。。。
そんなに見つめられてもな。。
。。んったくなんなんだ。

。。
飯田は将来なりたいものは?」

「うーん。。。。。。
。。。
大きくなりたい。」
これは小さい頃と変わらない夢。
私って進歩ないな。。。
でもまだなれてないから。。

「ばか。抽象的すぎ。
具体的にしなきゃ、実現できないだろ?
大きくってどんな風に?どんなことをして?
とか落とし込んでだな。。。」

「。。。」

「。。。じゃあ好きな科目はなんだ?」

「。。。。化学かな」

「なんで?」

「え?。。。
キモたんが授業してるからかな?」

「あっそう。。。。。。は?」

「え?まずい?」

「おい!どーいう意味だそれは」

「えっだってさー
キモたんいい感じにキモいからさ。
でもさ、たまにメガネがずれた時の感じは、
普段のキモたんでー。
。。。。」

「飯田。お前怒られたいのか???」

「。。。。うそうそ!怒んないでよ!
それも一つの理由かもしれないけど、
国語は答えが答えじゃないから、きらい。
社会は、過去のことは
ロマンがあるかもしれないけど
本当のことはどうだかわからないから嫌い。
英語は英語が話せたら
それでおしまいだから嫌い。
数学も物理も計算する必要性が別なところに存在してるから、科目がそれだけで存在しているのは不安定だから意味がわからない。
残されたのは化学かな。確実なものがそこにはある気がする。」

「。。。化学にだって確実にするまでは、
不確実だぞ?」

「うん。でも意味がわかる。
作りたいと思うものを確実なものにしたいって
気持ちが」

「。。。科目までもそう考えんのか。」

「え?」

「あー。いい。それいいな。
じゃあ化学にいけ!
飯田はここを受けるように」

。。。
紙に書いてあるのは東大の文字。。

「あのね。大学のことはよくわからないけど、
そんなところ行けるわけないことぐらい
わかる」

「じゃあここだな。大丈夫。
飯田がその気になれば、
東大もいける。
それにな、飯田みたいなやつはきっと必要だ。
落ちるわけない」

「。。。よくわかんないけど、
まあキモたんの好きに書いといて、
じゃ!」

「おい?飯田!」

「なに?」

「なんか良いことあったのか?」

「うん!夢を叶えた人がいたから、
私も夢を見てもいいんだなって思えた。
あっでも少しだけね」

「また一歩進んだな、よし!
ほらこれ」

キモたんがチケットをくれた。。
ん?ワンワン券?

「とんとろにプレゼントだ。
犬用ケーキ無料だから」

「じゃあキモたん一緒にいこ!」

「は?いかん!」

「ちぇ。とんとろと二人とはいえ、
さみしいじゃん。
じゃあ偶然会えるの楽しみにしてます!」

「ばか!」

「じゃあまたあしたー」
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