雨玉
その手がそっと動き、声が奪われたわたしの唇を、親指が撫でる。


耐えられなくなって、わたしは目を逸らした。


視界がふと暗くなり、その刹那、さっきまで彼の親指が撫でていた唇に、冷たい何かが重なった。


それが彼のそれだと気付くまでに時間はいらなかった。
< 12 / 21 >

この作品をシェア

pagetop