雨玉
「会う度に泣いていたから、泣き虫ってイメージが強いんだ」


それはもうずいぶんと前の話だよ。


そう思ったけれど、言わなかった。


それはわたしがまだ高校生だったときの話。


悲しいことがあって泣いていると、ずっと側にいてくれて、慰めてくれたのは、いつだってヒロくんだった。


「ねぇ、覚えてる?」そんな前置きをして、わたしたちはヒロくんと出会った頃のことをポツリポツリ、思い出し始めた。


4月の日差しがやけに優しく、わたしたちを包み込んだ。
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