雨玉
「待った?」


一つ歳上の彼が息を切らしながら歩いて来たのは、それから3分も経たないうちだった。


待った?って…。


約束の時間を30分もオーバーしているんだから、待っていて当たり前だ。


彼は長い脚をめいっぱい伸ばしてわたしの座っているベンチに腰掛けた。


「その遅刻癖どうにかならないの?」


そんなことを言いたいんじゃないのに、つい、可愛くないことを言ってしまう。


「ごめんごめん」


「もう」


困った顔で謝る彼をもっと困らせたくてわざと頬を膨らめた。


「ごめん」頭を下げる彼に「いいよ」そう言って微笑んだ。
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