あなたの優しさが…
部屋に戻り、キャリーケースに荷物をつめる。
もともと、キャリーケースだけの衣類で生活してたんだから…
雅樹に買ってもらったのは、置いて行こう。
けど…1着だけ。
試着中に雅樹の顔が変わった1着。
これと、指輪だけ持って行こう。
携帯はいらないから、置いてく。
キャリーケースをゴミ袋に入れる。
行こう…
ここにいたら、ゆかりさんが来ちゃうかもしれない。
ゴミ袋を持ち、私は玄関へ向かった。
誰にも会いませんように…
玄関を出ようとしたら
『どちらへ』
そんな声に振り向くと
組員さんが不思議そうに見ていた。
「あ…キャリーケース…もう使わないから、捨てようかと思って…」
『そんなの、やりますよ!』
「いえ、気分転換に外の空気も吸いたいんで、大丈夫ですよ」
そう言いながら、外へ出た。
少し歩いて、小走りになった。
ごめんなさいって思いながら…
私は駅に向かった。