あなたの優しさが…
このパターンか…と
私は部屋に入り、無造作に置かれた
スーツをハンガーにかけた。
そして、フロントにコーヒーを頼み
客の手元にコーヒーを置いて、お盆を下げようとした時
『何故コーヒーを?』
客が書類に目を向けたまま言ってきた。
「あ…コーヒーお嫌いでしたか?」
ちがったかな?
『いや、嫌いじゃない。
何も言ってないから』
少し言葉足らずな感じ。
「なんとなく…いつもコーヒーを
飲みながら仕事をされてるかと
思いまして…出すぎた真似をしてしまい申し訳ありませんでした」
いつものように低姿勢で頭を下げる。
クスッと笑われた気がした。
だから私も顔を上げて
客を見て笑った。