あなたの優しさが…
『寝るわ。あと何分?』
そう言うと客はネクタイとズボンを脱ぎ始めた。
「あと30分です。延長されますか?」
私は答えながら、クローゼットから
バスローブを取り出した。
『あー。延長』
と言い、ベットに寝ころぼうとしていた。
「お客様。申し訳ございませんが、
ワイシャツがシワになってしまいます
バスローブに着替えていただけますか。」
そう言うと客はビックリした顔をしたが、すぐに聞き入れてくれた。
「おやすみなさいませ」
私は軽く頭を下げ、フロントから
アイロンと裁縫セットを借りた。
気になってたボタンのほつれと
ズボンのシワ。
客が起きる前に済まそうと
作業を始めた。
客がそれを密かに見ていたなんて
気づきもしなかった。