あなたの優しさが…
私が部屋に入ると新規客は目を見張った。
「新調してまいりました」
「こういう色、初めてですが似合いますかね…」
そう言い、襦袢の裾を見ていると
温かいもので私は包まれていた。
ビックリして、顔を上げると
あの優しい顔が目の前にあった。
ドキッとした私は自分でもわかるくらい
顔が赤くなった。
少し慌てて離れようとしたが、
男の手は緩まず、きつくなった。
抱きしめられてる…
温かい…
居心地いい…
「あの…」
『なんだ』
その言葉に少し笑ってしまい
「お名前、お聞きしても宜しいですか?」
客に興味なんか持たない。
けど、この人は違った。
ちゃんと名前で呼びたかった。
初めて会った時から
他の客とは違ったんだ…