あなたの優しさが…

車が停まると、すぐに年配の男が駆け寄ってきて、男同様土下座をした。


『桐生の若、この度はウチのが大変ご迷惑をかけてしまい、申し訳ありません』

『何卒、穏便に…穏便に』

地面に額を付けて謝っている。


多分、この人が沢田組の組長さん…

私は見てはいけないのだと思い

雅樹の胸に顔を埋めた。


雅樹は私の頭を優しく撫ぜてくれた。


ヒステリックな母の声がした
『ちょっと。あんた!なんでこんな若僧に頭下げてんのよ』


その言葉に沢田組の組長さんは
母を殴った。
『ばかやろう。てめーなんぞ知るか!
二度と俺の前に顔見せんじゃねー』


私には母がどんな顔をしているか
わからない。顔も見たくない…。
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