二人のプリンセス
「エマッ!!」
先に叫んだのはアグレラだった。

その後を続けて、
「ダメです、エマ様。無理をされてはお体にさわります。お部屋にお戻り下さい」
侍女は高すぎる声をあげた。

「大丈夫よ。あなたは下がってなさい。私は夫と話があるのです。二人にしてちょうだい」

エマのピシリとした声が廊下に響いた。
いつもは涼しいエマの声が、この時はピリピリと身の逆立つようだ。

侍女は少しびくりとするが、「それでは……失礼します」と言い残すとクルリと身を翻して立ち去った。
エマは大丈夫などではなかった。本当ならば無理やりにでも止めるべきだったのだ。
しかし、いつもは穏やかなエマにあのように殺気立って言われると、それに従わずにはいられなかったのだろう。


侍女が立ち去ると、エマは一呼吸おいて話し始めた。

「……この度は……私が……」

エマの声は震えていた。
自分が子供を産んだこと。

これがどういう事なのか、自分なりに良く分かっているつもりだった。

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