二人のプリンセス
「エマ……お前が双子を生んだこと。……これは神の決めた運命なのかもしれぬ……そなたを責めることは私にはできない」
アグレラの声は恐ろしいほどに穏やかだった。
先ほどまでの怒りに満ちていた顔からは想像もできない。

「ではっ……あの子達をどうか……」



「それはなぬ!!ドリアス王国、王家の掟。仕来りじゃ。双子は不吉じゃ……必ず後から生まれたものが魔を呼ぶことになる。そうなるとこの国は壊れてしまう。……エマ、お前は私の妻。王妃のお前なら分かってくれるだろう」

「私は、あの子達二人の母親です!!あなたは父親なんですよ!!」

「国民何千人もの命と生まれたばかりのたった一人の命、どちらが大切か……私はこの国の王だ。父親である前に、この国の民を守る義務があるのだ」

「しかし……」
エマのたった一つの願いはアグレラには聞き入れてもらえなかった。
エマにはこのような形でわが子の命を奪ってしまわなければならないことが、どうしても許せなかった。

いつもは綺麗に束ね、艶のある長いエマの髪の毛。
それも今はひどく乱れ、不規則に流れ落ちている。

つい先ほどまで床に就いていたのだ。
寝巻きのままでは、まだ肌寒い春の朝だった。



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