二人のプリンセス
「私には……やはり耐えられませんわ。双子のどこがいけないのです。二人はこの世でたった二人しかいない姉妹じゃありませんか。……そんな古い決まり事に従って、後から生まれてきた者を殺すだなんて」
透き通るような白い肌に、涙という雫が落ちる。

「エマ、もう決めたことだ。私を困らせないでおくれ……二人とも殺すわけじゃないのだ。一人はいるだろう。そんなことよりも、お前が双子を生んだということ。決して蛇口外してはならぬ。お前は初めから双子など生んでないのだよ。これからはそう思いなさい」
そう言い残すと、アグレラは不適な笑みのようなものを浮かべ立ち去っていった。

一人残されたエマは夫に何もいえない自分の非力さを呪った。


この時エマは、最初で最後、わが夫に嫌悪感を抱いたのだった。



それからしばらくして、エマは出産後の無理もたたってか、重い病にかかり、そのまま帰らぬ人となってしまう。
こうして双子が生まれたことを知る者は、国王アグレラとその側近達、そしてあの侍女ぐらいでこの話は永遠に面にはでないはずだった。


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