華麗なる安部里奈
「あらあら……そんな事があったのね。2人とも怪我はないのかしら?」

「うん、それは大丈夫なんだけど」

私と律子さんがそんな話をしていると、アッちゃんは玄関先のほうへ小走りで行き、折れた剣を持ってこちらに戻ってきた。


「ママ、これ……」

「あらまぁ。壊れちゃったのね」


「猪本っていう悪ガキがやったの。名前は分かってるし、そいつの家に行って弁償させようか?」

私がそう言うと、律子さんはアイロンをかけながら、うーんと少し悩んだような顔をした後に言った。


「壊れちゃったものは仕方ないものね。それに、あまりそういう子に関わりすぎると、また面倒な事になってしまうかもしれないし」

「でも、こんなの許せないよ」


「その剣の事は事故だと思って、諦めるしかないわね。世の中、いろんな人が居るから、こういう事もあるんですよ」

律子さんはアイロンをかけながら、私を説き伏せるように言った。

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