華麗なる安部里奈
それから5日後にお通夜、その翌日にお葬式があった。お通夜でも、お葬式でも正十郎は涙を見せなかったが、ずっと心痛な面持ちをしていた。

テッちゃんは涙は見せる事はなかった。アッちゃんがずっとそばに居るし、私の前では泣けないというような気持ちがあって我慢していたのかもしれない。あるいは、あまりに突然の事で、泣く事すらできなかったのかもしれない。

一方のアッちゃんはずっと泣き通しで、私とまともに話しをする事もないくらいだった。



そんなアッちゃんのそばに、私の母はずっと寄り添っていてあげた。

まるで、自分が母親の代わりになるというようなくらいの感じで、時折テッちゃんの手を握ったり、テッちゃんとアッちゃんを少しでもフォローしてあげようという風に接してあげているようだった。

私はお葬式の時の律子さんの静かに眠る表情をいまだにハッキリと覚えている。アルバムの、律子さんの写真を見なくても、目を閉じれば律子さんの綺麗で、可愛くて、優しくて、温かいあの笑顔を思い出せるのだった。


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