華麗なる安部里奈
テッちゃん達の部屋のテーブルに、私が作ったカレーライスが並ぶ。

「律子ママ教わったカレーを作ってみたの」

「律子から……そうですか。お嬢様、ありがとうございます」

正十郎は丁寧にお礼を言ってくれた。



「なんかこのカレー……」

アッちゃんが何か言いかけたのを、テッちゃんが手で制止するような姿が見えたが、今の私にそんな事気にしている余裕はない。このカレーの味が律子さんと同じなのかどうか。

さきほど、自分で味見をした時には、正直美味しい物とは言えなかった。おそらく、というか絶対にコーヒーの量が多かった。でも、濃くなったコーヒーをどう薄めたら良いか分からなかったし、調理師の小西さんに聞くのもなんだか嫌だった。

小西さんは無愛想で、職人気質というか、頑固というか、中途半端に何か聞くと怒られたり、面倒な事になりそうだったからだ。

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