華麗なる安部里奈
「それじゃ、哲也も敦也も頂こうか」

正十郎がそう言うと、3人は「いただきます」と言い、カレーライスをそれぞれ口に運んだ。正十郎は一瞬「うっ」という顔をしたが、そのまま何事もなかったように食べ続ける。

「なんかこれ……」

アッちゃんは何かを言いかけたが、正十郎のほうを見ると、そのまま黙々とカレーを食べ続けた。



やっぱり、美味しくないんだな……。私には律子さんの味を再現する事はできないのだろうか。でも、律子さんが居ないのだから、私が作るしかない。私は心の中でそのような葛藤を重ねていた。

すると、その時、

「まぁまぁかな」

とテッちゃんが言い、一気にカレーを食べ始めた。



私の気のせいかもしれないが、テッちゃんの目には涙が浮かんでいた。それが、カレーの味のせいなのか、私が律子さんの味を再現しようとした事に対しての気持ちなのか、その時の私には分からなかった。


< 135 / 135 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:0

この作品の感想を3つまで選択できます。

この作家の他の作品

公開作品はありません

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop