華麗なる安部里奈
するとどうだろう。

テッちゃんは何事もなかったかのように、飄々とした表情で、庭の樹木のほうを見つめて言った。

「ねー、マリちゃん。あの花ってなんていう名前?」



もしかしたら、テッちゃんなりに私に気を遣って、噴水に落ちたという事実を直視しないようにしてくれていたのかもしれない。私はそんなテッちゃんがどの花の話をしているのだろうと気になり、テッちゃんが指差す方向を見た。



「あぁ、あれ? あれはカシワバアジサイって言うのよ」

マリちゃんは私の頭や顔をタオルで優しく拭きながら、そう答えた。


「へー」

花に興味があったわけではなかったのだろう。テッちゃんは素っ気無い様子でそう一言だけ答えた。






カシワバアジサイ。

私は自分の庭にあるいくつかの花の名前は知っていたが、この名前はその時初めて知ったのだった。





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