華麗なる安部里奈

「ねぇ、律子ママ？」

「はい。なんですか？　お嬢様」


「律子ママって……凄く綺麗だね」

「まぁ、うふふ。お嬢様にそんな風に言ってもらえるなんて。嬉しいわ」

律子ママは嬉しそうに笑ってくれた。


「私、律子ママが本当のママだったら良かったのに」

「なんでですか、お嬢様。淳子さん……お嬢様のお母さんもとっても奇麗でしょう？」


「奇麗は奇麗なんだけどね」

「私なんかよりも何倍もお奇麗で、頭も良くて、素敵な方じゃないですか」



律子ママが言うように、私の母・淳子は奇麗で、頭も良い。なんでも完璧にこなせるような人で、これといった欠点もない。

しかし、それが小さい頃の私にとっては、なんだかつまらなくて、律子ママみたいな雰囲気の女性のほうが、親しみやすかったし、一緒に居て楽しいなと思ったのだ。

それに、こんな風に一緒にお料理を作るなんて事も、してくれた事はなかったし、しようと話をしてくれた事もない。