華麗なる安部里奈
「そんなに難しく考える必要はありませんよ。こうやってトントンと切っていくだけです」

律子さんは、私の後ろに回り、私の右手の上に自分の手を乗せると、私の手と一緒に包丁を動かし始めた。



「こうやってー……トントントン……」

律子さんはゆっくりと包丁の動かし方を私の手に伝えてくれている。そして、

「左手は猫さんの手にしてくださいね。指を伸ばしていると指に包丁が当たった時に切れてしまいますからね」

と言って、自分の手の指をキュッと曲げ、私に見せてくれた。



「それで、この左手をこうやってお野菜に添えて……包丁はゆっくり動かせば大丈夫です。トントンッ……」

今度は実際に人参をまな板の上に乗せて、私の手を動かしながら切ってくれた。２～３回、人参を包丁で切り終えると私の手の上から、自分の手を退ける。

「それじゃ、お嬢様１人でやってみてください。肩の力は抜いてくださいね」

律子さんはニッコリと笑った。

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