華麗なる安部里奈
それからも私は律子さんの指示を受けて、カレー作りのお手伝いを続け、外が完全に暗くなる頃には律子さんお手製のカレーができあがっていた。

カレーを煮込んでいる途中、律子さんが「隠し味にインスタントコーヒーを少し入れると良いのよ」と言っていたのだが、私はその時ちょうどテレビの『ドラキュラ時計』の一場面に気をとられていて、律子さんがどのくらいの量のインスタントコーヒーを入れたのか、見る事ができなかった。



それでも、自分が手伝ってカレーができたという事だけで、私は一つ大人の階段を上ったような気がしてとても充実した気持ちだった。


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