華麗なる安部里奈

正十郎の忠告

私は律子さんのカレーを食べて以来、調理人が作ってくれるカレーを食べても美味しいと感じる事ができなくなってしまっていた。

調理人の作るカレーはスパイスが利いていて、本格的な味ではあるのだろうが、子供が食べるにはなんだか大人すぎる味だったからだ。

それからの私は、一番好きな食べ物を書いたり、答えたりする機会があるごとに「カレーライス」と答えた。もちろん、ただのカレーライスではなくて、律子さんの作ったカレーライスなのだが、その事は秘密だ。


同級生の女の子達からは、「安部さんほどのお家のお嬢様がカレーライス好きだなんて変わってるね」と笑われる事もあった。

しかし、私はそのような言葉を聞くたびに、律子さんのカレーを食べれば、誰だってカレーライス好きになるに決まっていると、心の中で思っていた。

< 68 / 135 >

この作品をシェア

pagetop