華麗なる安部里奈
そして、ノートパソコンのキーボードを何回か押した後、椅子から立ち上がると、私の座っていたソファの隣に移動し、「よいしょっと」と言いながら座った。


それから、父は両手を組んで下を俯くようにして、しばらくどう話そうか考え事をしているような感じで、そのまま30秒ほど俯いていた。

私はそこでまた、更に自分の気持ちをダメ押しのような感じで伝える。


「私ももう小学5年生だし、お友達ともっと遊びたい」



すると、父はようやく口を開いた。


「里奈の言いたい事はよく分かるよ。里奈もお友達と同じように遊びたいと思うのは当然の事だと思う」

「それじゃ、習い事を減らしてくれる……?」


私は喜んで、俯いていた顔を上げると、目を見開いたようにして言った。しかし、すぐにそれを手で遮るような動きをして、父が話を続ける。

「ただね、里奈。里奈は安部家の、私の血を引いた娘なんだ。それは分かるね?」


私は黙って頷く。


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