ジハード
殺人的な日光とも重なって、梨香は脳が揺れるような感覚を覚えた。
もしこの男と一瞬にいるところを友人知人に見られでもしたら、梨香が学校内で身を削って敷いた体裁は音を立てて崩れるかもしれない。
この男が彼氏だと噂されたら……運悪く、梨香が援助交際をしているのだという話にもつれてそれが友人達の話題に上りでもしたら、終いである。
「……君はどう思う? 全ての圧力を除けば、人はいつ子供である自分を捨てるのだと思う?」
燃え盛る太陽が肌を焦す。今日は日焼け止めを塗り忘れたから早く帰りたかったのに、とんだとばっちりだ。
「……暑い」
「ふむ、質問には無関係もいいところだがそれが君の答えかい?」
梨香は無意識に汗をミニタオルで拭った。そして男に背を向け、左右に体を揺らしながら歩き始める。
「おや、何処に?」
力ずくで縋ってこなかっただけ幸いだったかもしれない。変態予備軍の臭いを醸す男は、梨香の背中に視線を投げたまま相変わらず話し続けている。
しばらく歩いた後に、はっと気付くと男とは随分と距離を空けた所にいた。
ここまで来るとようやく男も梨香から興味を手放したらしく、何処か含みのある視線を投げ掛けてくるのみとなった。だからといって気持ち悪いことに変わりはなく、また男が絡んでこないように梨香は速足でその場を去った。
もしこの男と一瞬にいるところを友人知人に見られでもしたら、梨香が学校内で身を削って敷いた体裁は音を立てて崩れるかもしれない。
この男が彼氏だと噂されたら……運悪く、梨香が援助交際をしているのだという話にもつれてそれが友人達の話題に上りでもしたら、終いである。
「……君はどう思う? 全ての圧力を除けば、人はいつ子供である自分を捨てるのだと思う?」
燃え盛る太陽が肌を焦す。今日は日焼け止めを塗り忘れたから早く帰りたかったのに、とんだとばっちりだ。
「……暑い」
「ふむ、質問には無関係もいいところだがそれが君の答えかい?」
梨香は無意識に汗をミニタオルで拭った。そして男に背を向け、左右に体を揺らしながら歩き始める。
「おや、何処に?」
力ずくで縋ってこなかっただけ幸いだったかもしれない。変態予備軍の臭いを醸す男は、梨香の背中に視線を投げたまま相変わらず話し続けている。
しばらく歩いた後に、はっと気付くと男とは随分と距離を空けた所にいた。
ここまで来るとようやく男も梨香から興味を手放したらしく、何処か含みのある視線を投げ掛けてくるのみとなった。だからといって気持ち悪いことに変わりはなく、また男が絡んでこないように梨香は速足でその場を去った。