初めてを君と。

「え、クレアがトップなん？？すごいー!!!!!
頑張って!!!!!」
茜が小さい声で囁く。
私は返事をしてから席を立ち、舞台袖に向かった。

舞台に上がり、ピアノの前に立ち、お辞儀をする。
ライトの光で生徒席の方があまり見えないことにほっとした。

人前でピアノを弾くことは今までに何度もあったけど、そのたびに緊張はするものの、ピアノを弾くことの楽しさの方が勝っていた。

「曲目はベートーベンの月光の曲です。」

司会の先生の紹介が終わり、ピアノの椅子に座る。

深く深呼吸をしてから鍵盤に指を置いた。

弾きはじめると曲の情景が次々と浮かぶ
自分の気持ちが音にのって、どんどん流れていくような感覚に陥る。



演奏が終わって、指を膝の上に降ろした。

音の余韻が講堂に残る

少し間が空いてから、拍手が鳴った。
どんどん大きくなる拍手の音を聞いて、私はまたピアノの前に立ち、深くお辞儀をした。

「嘉手納さん、ありがとうございました!
素晴らしい演奏を聴かせてくれました、皆さん、もう一度拍手をお願いします!!!!!」

司会の先生の声により、また一段と拍手がおおきくなった。