年下ワンコとオオカミ男~後悔しない、恋のために~
「そりゃまたなんで?」
「かっわいいかわいい私の後輩が、きゅって祥裄の袖を引っ張ったんですよ。
うるうるおめめの上目遣いで、私、木下(きのした)さんがいないとダメなんです、とかなんとか囁かれたんじゃないですか?
私は一人でも十分人生楽しいですからね」
おかわり、とグラスを差し出しながら、すでにいい感じにアルコールが回っている私は冷たい木のカウンターにぴとっと頬をくっつけた。あー気持ちいい。
グラスを受け取りながらそんな私の様子に苦笑して、マスターが言う。
「ほどほどにしときなよ。今日は潰れても誰も迎えに来てくれないんだろ?」
「心配無用ですよー、私は強いので一人でも大丈夫です」
それからひたすら愚痴をいいながらハイペースでグラスを空け続ける。
マスターもずっと相手をしてくれていたけれど、団体のお客さんが入ってきてそちらにかかりきりになった。
自分でもちょっとそろそろやばいかも、となけなしの理性が訴えてきて、お会計をして席を立つ。
大丈夫か、と心配そうにするマスターに笑って手を振って、店を出た。