年下ワンコとオオカミ男~後悔しない、恋のために~
「カットモデルをお願いしてる、片桐沙羽さん。ナンパじゃありません」

「あ、あの? ホントだ、キレー!」

酔っ払って舌っ足らずな喋り方になっていた。大輔くんは軽く眉をひそめながら、それでもその女の子の顔をどかそうとしない。


「初めまして! 大輔の一個上の先輩の、村山咲(むらやまさき)と申します! うちの大輔が、いつもお世話になってますっ!」


シャキン、と敬礼して、背筋を伸ばす。大輔くんの体からその子の顔が離れて、妙にほっとした。

「もういいから咲さん、あっち行ってて。沙羽さんたちひいてるから。……エミさーん、この酔っ払いどうにかしてくださーい」

「なにおう、大輔のくせに、生意気なあ」

ヘロンヘロンになっているその子の背中に遠慮なく手を置いて、大輔くんは集団の中へ押し返そうとする。
エミさん、と呼ばれたおっとりした感じの女の人がその子を引き取って、私にぺこ、と頭を下げてから二人で席に戻って行った。
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