年下ワンコとオオカミ男~後悔しない、恋のために~
辻井さんと話しながら、大輔くんが私の髪を切っていく。

前回は少し感じた大輔くんの緊張も、今日はまったく感じなかった。迷いのない手つきでどんどんと切り進めていって、今日は辻井さんが途中で手を出すこともあった。この前は最後にしていた説明を、今日は切りながら全部話している感じ。

切り終わった大輔くんが、シャンプーに案内する前に、辻井さんにチェックをお願いした。前回はスタイリングまで全部してからのチェックだったのに、なんでだろう、と思っていると、チェックし終わった辻井さんが申し訳なさそうに私に言った。

「すみません、これから本店のほうに戻らなくてはいけなくて、僕は最後までいれないんです。手直しの必要はないと思いますが、もし何か気になることがあったら、いつでも来店していただいたら直しますので」

「あ、全然、大丈夫です。この前もどこを直したのかわかんなかったくらいだし」

私がブンブンと手を顔の前で振ってみせると、辻井さんが安心したようにありがとうございます、と笑った。
それから大輔くんに、じゃあよろしくな、と言って、私には丁寧に頭を下げてその場を離れる。


「本当に忙しいんだね、店長さんって」


シャンプー台に案内されながら大輔くんに言うと、苦笑いを浮かべる。


「全部に手を抜かない人なので。本当はモデルを使っての練習も、こんなにつきっきりで見てもらえるのはかなり珍しいらしいです。

……それに、今日はちょっと、俺が無理を言ったので」


シャンプー台を倒しながらそう言った。大輔くんも他の日は空いてない、みたいなことを前に言っていたし、今はみんな忙しい時期なのかもしれない。
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