年下ワンコとオオカミ男~後悔しない、恋のために~
シャンプーを終えて、椅子に戻って髪を乾かしてもらっていると、二人きりだ、ということに気がついて、急に意識し始めてしまった。

営業後の静かな店内に二人きり、というシチュエーションは、妙にどきどきさせられる。

いつも大輔くんの練習が終わるまで待っている時はそう思わなかったのに、髪を触られていることで彼との距離が近く感じて、なんだか少し、緊張した。


大輔くんは特に変わらない様子で、乾かし終わると前回と同じように、手元の鏡を合わせ鏡にしながら、いかがですか、と私に尋ねた。

肩にぎりぎりかからないくらいの、大人可愛い感じのボブ。

前髪が目の上ギリギリくらいで作ってあって、それがさらに女の子っぽさを感じさせる。前よりももっと、可愛さを強調した雰囲気だ。

「うん、いい感じ。私でも可愛く見えるね」

「沙羽さんはずっと可愛いですよ」

おどけた私に、大輔くんが真面目な顔で言った。

美容師さんがお客さんを褒めるのなんて当たり前だけど、そう言われるとやっぱり、嬉しい。


今日はこれで終わり、この後食事に誘うべきかどうか、実を言うとずっと迷っていた。

本音では一緒に過ごしたいけれど、過ごしたら過ごしたでまた寂しい気持ちになりそうで怖い。どうしようかと思っていると、大輔くんがちょっと待っててください、と私を置いてスタッフルームに入っていった。
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