年下ワンコとオオカミ男~後悔しない、恋のために~
こんな時間に外を歩いている人なんていなくて、誰も見ていないならいいやと、涙をこらえる努力は放棄した。


さっきまでの楽しい気分が霧散して、足取りもとぼとぼとしたものに変わっていく。

涙と一緒にしゃくりあげる声が止まらなくなってきて、ひっくひっくと情けない声を漏らしながら、歩き続ける。



そのうち、ポツン、と涙以外の液体が顔に当たるのを感じて……。


見上げると、空から雨粒が落ちてきていた。


私の気持ちに呼応するように、雨はどんどん激しくなっていく。顔に、髪に、体中に雨のシャワーが降り注いで、長い髪が水分を大量に含んで重くなっていった。



――沙羽の髪、すごく綺麗だよな。絶対切るなよ。



祥裄が褒めてくれたから、三年間ずっと伸ばし続けてきた髪。トリートメントに通って、毎日ケアして、時間をかけて乾かして、傷まないように注意して……。

絵里ちゃんの、カラーリングされてコテで巻かれた髪を思い出す。
私みたいなまっすぐで真っ黒で重たい髪じゃなくて、軽やかでふわふわした女の子らしい髪を、祥裄は選んだ。

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