年下ワンコとオオカミ男~後悔しない、恋のために~
「沙羽さん、俺のこと嫌いですか?」
じっと見てくる目はごまかすことも嘘をつくことも許してはくれなくて、私は黙り込んだ。
「一応これでも美容師なので。いろんな方の相手をしてきましたし、人の顔色を読むのは得意なんです。俺が勝手にうぬぼれてるだけなら、はっきり言ってください」
「……」
「それとも。……前の彼氏とまた、付き合うんですか?」
「え?」
「あの時、シェリーにいた人。別れた彼氏ですよね?」
祥裄の話なんてしたことないのに、なんでわかったんだろう。
自分で言う通り鋭すぎる洞察力に、驚きを隠せない。
「あの人が沙羽さんをあんなに泣かせたんですよね? なのに許すんですか?
……俺はイヤです。あの人には負けたくない」
ぎゅ、っと私の手を握る手に、また力が込もった。
振り払うことは思い浮かばずにされるがまま、怒りさえ感じる真剣な目から視線を逸らせない。
「返事は急ぎません。お願いですからきちんと考えてください。
……俺は絶対、沙羽さんを泣かせたりしませんから」
そう言う大輔くんの目は、子犬じゃなくて、しっかりと男の人の目をしていた。