年下ワンコとオオカミ男~後悔しない、恋のために~
「なんかもういいや、どうでも」
私もグラスのワインを舐めながらそうあっさりと言い捨てると、祥裄はグラスを置いて、なぜか姿勢を正して座り直した。
「……なによ?」
私はソファの背もたれに寄りかかってぐでっと座ったまま、グラスを離さず目だけを向けてその姿勢の意味を問う。
「これであいつも俺も同じ立場だってわけだ。……やり直さないか、俺たち」
祥裄の顔は真剣だった。私の手からグラスを取り上げて、膝立ちになる。
「もう一回、付き合ってくれ」
私を囲うようにソファの背もたれに手をついて、まるでキスを求めるように下から顔を近づけてくる。
「ちょ、何すんの……」
「俺が悪かった。もう泣かせない。……また、俺のためにこの髪を伸ばしてくれないか?」
祥裄の手が髪に触れた。あの頃とはまったく長さの違う、肩の上で揺れる髪。
すいっと掬い取って、口付けた。そのまま見上げる姿はまるで、私に許しを乞うているようで。
祥裄から放たれる色気に絡め取られて、目が離せない。
「やっとわかった。俺にはお前しかいない。
……好きだ、沙羽」
同じような見上げる体勢、同じような必死さで、私を求める好きだ、の言葉を、大輔くんとは違う響きで囁いた。