年下ワンコとオオカミ男~後悔しない、恋のために~
「でも、迷ってる、と。……私個人の意見としては、わんこはやめといた方がいいと思うわ」
妙に真面目な顔で瑞香が言った。
「あんたの言った通り、もうそんなガキくさい恋愛感情で動くのは危険よ。恋人としてはいいのかもしれないけど、結婚相手としては最悪ね、その子。給料低いわ仕事の拘束時間は長いわ、周りには女ばっかだわ。
これから先、その子の気が変わらない保証はどこにもないのよ? そうなった時にその子はすぐに次にいけるけど、あんたは次の貰い手なんてすぐに見つからないんだから」
「なんで最初から別れる前提なのよ?」
「それはその子が若いからよ。
大輔くん、だっけ、その子にとっての恋愛の重さと、今のあんたにとっての恋愛の重さは、どう考えたって釣り合ってない。出会って三ヶ月かそこらでしょ、そんな真剣に考えてると思う?
それに比べて祥裄くんは、ずっとあんたのことを見てきたんだし、あんたが結婚を望んでることもわかってる。やり手の営業マンで、収入も安定してて、年齢も一緒。同じタイミングで将来を考えていける」
ぐいっとビールを煽って、いつの間にか寄っていた私の眉間のシワに人差し指を押し付けた。
「わかってるんでしょ、大輔くんを選べば、あと数年は結婚はない、って。あんた待てるの? 若い男の子の気を、それまで惹いておける?」
缶を持った手でグリグリするものだから、顔に缶が当たって冷たい。
瑞香の指摘は、聞いてて嫌になるくらい的確だった。今日一日ぐるぐる考え続けたことを、すぱっと切りつけてくれた気がする。
「……自信はない」
「じゃあ祥裄くんにしときなさい。悪いことは言わないから」
瑞香が缶でこつん、と私の頭を小突いて、言った。