年下ワンコとオオカミ男~後悔しない、恋のために~
結局持ってきたビールは全部空けて、泊まっていけばと言う瑞香の言葉に甘えてゲストルームで寝させてもらう。

さすがに瑞香に子供ができてからはなくなったけど、瑞香が結婚した当初は、二人で飲んだあとに家に押しかけて泊めてもらうこともたまにあった。旦那さんはその時から文句も言わず、翌朝寝坊した瑞香の代わりに私の朝食まで作ってくれたことさえあった。こんな優しい旦那さん世の中に存在するのか、とひどく感心した覚えがある。


翌朝目覚めてリビングに顔を出すと、さわちゃん、と天使の笑顔を浮かべて女の子が二人駆け寄って来てくれた。

お姉ちゃんの美優ちゃんは五歳、妹の優奈ちゃんは三歳。

よく遊びに来る私に二人とも懐いてくれて、さわちゃん、さわちゃん、といつも可愛く話しかけてくれる。

「みゆ、こんどおゆうぎ会でおひめさまの役するんだよ。すごいでしょ」

「ゆうなは、りんごさんのやく!」

一生懸命自慢するその顔は、まさに天使。すごいねえ、と褒めると誇らしげににっこりする、その笑顔に骨抜きにされる。ああ、なんて可愛いんだろう、このくらいの年の子供って。

「こら、ちゃんとご飯食べちゃいなさい。保育園に遅刻するでしょ! 
……沙羽、あんたも食べる? って言ってもトーストとサラダくらいだけど」

ありがたい申し出だけど断って、コーヒーだけ貰うと、リビングのソファに座ってダイニングテーブルを囲む三人を眺めた。
今日はきちんとお母さん業をしている瑞香は、忙しそうにキッチンを動き回っている。旦那さんはもう先に出かけたらしい。

同い年で五歳の娘の母、って、すごいなあ、と改めて思う。

ママ、と呼ばれて、ご飯をこぼす優奈ちゃんを叱りながらも食べさせてあげている様子は、立派にお母さんだ。その姿は素直に尊敬できるし、憧れる。早く私もああなりたい、と、切実に思う。
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