年下ワンコとオオカミ男~後悔しない、恋のために~
今は急ぎで抱えている仕事はない。今日は定時で上がって、パーっと飲もう。

そう決めるとふっと大輔くんの顔が浮かんで、一瞬連絡しようかなとも思ったけど、いつも木曜日はミーティングで遅くなる、と言っていたことを思い出して、携帯を触る手を止めた。

やめよう、やっぱり今日は一人で飲もう。

一人で飲む、となると結局向かうのはシェリーだ。
定時キッカリにタイムカードを押して、その足でシェリーのドアをくぐり、カウンターの中のマスターにいつものオムライスを注文する。この時間はまだ客足もまばらで、バイトの男の子と適当に話しているとすぐにオムライスが運ばれて来て、早速とろとろの卵にスプーンを差し入れた。

「うーん、やっぱ美味しい! オムライスはマスターの作ったやつじゃないと!」

口いっぱいに頬張って、卵とデミグラスソースの絶妙なハーモニーを味わっていると、マスターがカウンターの向こうから声をかけてきた。

「なんだ、今日はえらくご機嫌だな」

「わかります? 手がけてた案件が一段落したんです。クライアントの感触も良好で」

うふふとにやけながら話していると、後ろからコン、と鞄の角で小突かれた。


「そりゃ良かったな。例のカフェ、落ち着いたのか」


いつの間にか現れた祥裄が当然のように私の左に腰掛けて、マスターに注文する。

「なんかこいつが食ってるとすっげえうまそうに見えるんだよな。マスター、俺もオムライス」

おう、とマスターが裏に下がっていく。
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